本染め手拭いのデザインについて
本染め手拭いのデザインについての問い合わせに対する回答の為、染め屋との打ち合わせを行った。
本染めのデザインは以下の通り
- 白地に総柄かつ端部まで
- バット1色
- 相当に細かいデザイン/デザイン細部は0.3~0.5㎜程度の部分あり
上記の柄に対する回答は大阪はすべての染め屋が不可。東京はデザイン修正の上、可能。
東京の染め屋ではイラストレータデータでの入稿にて写真版(データ版)を作成する。版代は40000円程度。AIデータがない場合には追加1~20000円。その精細な版を使用すれば、東京の染めの場合、最低太さが1㎜程度は可能。0.5㎜でもかすれる可能性があるが可能。0.3㎜は不可。0.7~0.8㎜は欲しい。
また、ベタ染め白抜きの場合は上記より細部がでないとのこと。クレア抜き染であれば白地の柄デザインに近い細かさで染められるのではないかとの回答。
2021/3/3追加打合せ/東京染め
写真版にてAIデータの微修正は+3000円程度。難しい柄の場合には染め屋にてどうしても修正箇所がでるためこの程度の費用はかかることを想定する。一部が細い⇒修正⇒それによりほかが狭くなる⇒修正⇒繰り返しのようになりやすい。
デザインの細さでは0.5㎜で短い線(1㎝程度)であればギリギリ可能/かすれることを了解してもらう。長い場合には染料が回らない為染まらない。1㎝より長い線のデザインの場合には太さは1㎜以上は必要。太い箇所より染みていき染まるイメージの為、太い箇所⇒細くなる のようなデザインであれば染まりやすい。
また、染めの部分の中の白抜き部分に関しては2㎜角程度のイメージ。丸く抜く場合には半径0.7~0.8㎜程度(直径1.5㎜)、三角の場合には1辺2㎜程度、四角の場合には1.2~1.5㎜角程度で白抜き可能ではないかとのこと。ただし、これはベタ範囲が狭い場合20㎜角程度のベタ範囲から抜く場合である。ベタ染め等の場合には染料が多くなるため、細かいデザインはつぶれる。
どうであれ、かすれやつぶれは了解してもらうことが必要。シャープな部分は染めにより染み方が変わる。ここまで細かいデザインの場合には生地の糸が1本0.3㎜程度(目視にて)の為、糸と織りの兼ね合いから潰れや細部デザイン崩れ、しみこみ方によるにじみ等は必ずでる。
通常は、大阪での本染めの場合には最低のデザイン線の太さは基本的に10㎜程度まで。実際は一部5㎜程度でも可能だがデザイン崩れの了解をとる。ベタの場合には最低でも10㎜程度とする。
自分の所見
今回の案件に対しての回答は1㎜以下のデザインの部分も染められるとのことであるが、実際はどこまで精細に染まるか疑問。裏に綺麗に抜けるかもかなり怖さがある。染め屋の常識的な仕上がりの認識とエンドユーザーの仕上がりの認識のずれが大きくなっているかと思うので、仕上がりの了解を取ったうえでの製作とする。
ここまで細かいデザインの場合にはプリントでの対応を基本とし、本染めでの対応は今後の染め屋の染め技術を見ながらとする。
3/31染め上がり
結果として概ね綺麗に仕上がった。細い線のかすれも少なく、潰れも想定通りというところ。にじみは若干でたが、これは本染めの特徴であるため、問題視しない。文字同士が近すぎるところの潰れはあるがにじみでつながってしまったという解釈。この点はよりお客様への説明をすべきところかと思う。今回は写真版(データ版)での版作成の為、手彫りの場合とは条件が異なる。
- 本データ①においては0.3~0.4㎜程度の線が全くでていない部分があった。(写真中心)また、写真右上部分では0.8㎜程度でかすれがでている。
- 本データ②においても同様に0.8㎜程度の部分ではかすれが出ている。0.5㎜程度では線が消えたり、かすれたりとなっている。小さい文字の場合で文字間(染めと染めの隙間の白場)が1㎜無いような部分はにじみによる潰れは出てくることは了解が必要。
- 本データ③においても②同様小さい部分の場合には染めに囲まれた1㎜程度の範囲はつぶれることを覚悟。また、太い文字(染料が多い)部分に関しては前述のサイズよりも大きな余白でも潰れる可能性が高い。
- データ④からは1.2㎜程度の線は概ね綺麗に染められている。この部分に関してはにじみもそれほど多くでてはいない。ただし上記同様、染めに囲まれた白場は完全につぶれている。(元データは0.05㎜の余白)
- 上記の染めは生地を特岡生地(30番手糸/通常よりも細い糸)を使用して細かい部分を染め上がりやすくしている
結果
今回は東京で細かい部分が得意な染め屋にてかなり難しい細かい柄の染めであったが、概ねきれいに上がった。ただお客様によってはプリントと同程度に仕上がると考えられている場合も多い為、しっかりした事前の説明が必要。特に潰れとにじみ。工法上、何センチ以下は染まらないだとか何センチ以下はつぶれるという基準がその周りの染め部分の太さによってくるので示しずらい。
細かくみると同じ環境で、同じ生地のなかでも右側と左側でにじみの具合も違ってきている。のりの入り具合と染料の水分量によるかとは思うが、この辺の調整により同じ染め屋、職人でもうまくゆくときといかないときがあるかと思う。
これに対しては事前説明と了解、それを得られないと断らざるを得ない。今回大阪側の染め屋がすべて断ってきた理由も理解できる。なお、大阪側の染め屋のデザイン線の最低の太さは基本的には20㎜(最低10㎜でも受けてはくれる)と言われている。今回の結果からは10㎜程度であれば概ねどの工場でも綺麗に染まるが、10㎜を切るような場合には注意が必要。5㎜程度の線が多い場合には東京で染めるべきかと思う。
今回の結果からの概ね可能な案内 ※価格は高くなるが東京染めの場合以下のようなデザインの対応が可能 ・1.2㎜程度までの太さの線の染め ・1㎜~0.8程度の線の場合にはその染めの線の長さを5㎜程度までとする ・染めが0.8㎜程度の場合だとかすれる場合がある ・染めが0.5㎜程度の場合だとかすれる上、まったく染まらない場合がある ・染めに囲まれた抜き(白場)部分は5㎜角程度あれば問題ない ・それ以下の場合には周りの染め部分の太さによる。囲まれた染め部分の太さが抜きのサイズの倍程度であれば白抜き可能。ただし抜き1.5㎜程度まで。 ・細い染め部分に接した抜き部分であっても1㎜以下はにじみでつぶれる可能性が高い。
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません